榎本由美先生が描く漫画「養護施設を追われた少女」は、壮絶な「この世の地獄を生きた少女」の物語。
育児放棄し、娘を虐待する母親。
そして娘は狼のように唸り、四つん這いで走り回る子になってしまい施設へ・・・こちらでは第一話「狼少女」のあらすじと感想をご案内します。
養護施設を追われた少女 第一話「狼少女」ネタバレ
ネグレクトで狼になった少女
K市のある児童養護施設で、里親となるべく由志摩 満子が訪れて出会った少女は、とても人間とは思えなかった。
「施設でも、持て余すほどの子です」
職員がそう言うのも無理はない。
狼のように人に対して「ううう〜グルル!」と威嚇し、手足を床について走り回るのが、たった9歳の少女だとは、とても信じられない。
初めて会う人間に対して、少女・天音は全身で拒否し、警戒していた。
「まるで、狼少女ね」
しかし、由志摩は天音にひるむことはなかった。
里親制度は、本来、天音のようにネグレクトされて傷ついた子供たちのためのもの。
誰よりも深く傷ついているからこそ、こんなひどい状態になってしまった少女を世話したい。
由志摩は、天音を自宅へ連れていくことにした。
里子を受け入れている家庭
由志摩は、積極的に問題のある子供たちの里親になっていた。
自宅にはすでに4人の少年少女たちが里子として暮らしており、天音は5人目の里子として引き取られたのであった。
由志摩は天音に、彼らは血のつながりがなく、同じく里子としてやってきた子供たちだと説明した。
「くさっ、誰? この子?」
先にいる里子たちは、正直なところ歓迎ムードではなかった。異臭を放ち、獣じみた見た目をしている天音は、一言も話さずに犬のように壁を引っ掻くだけだった。
優しく接する由志摩に心を開く
いきなり環境が変わって怯える天音だったが、辛抱強く優しく接してくれる由志摩のおかげで、少しずつ人間らしさを取り戻していく。
はじめはお風呂も嫌がり、食事は暗くて狭い場所で手でわしづかみにして犬食いしていたものの、由志摩を「守ってくれる人」と認識して頼るようになっていった。
ご飯をきちんとテーブルで食べ、「食べる」と言葉を発した。
天音が黙っていたのは、母親に「声を出すな!うるさい!」と虐待されてきたからだったのだ。
フライパンのトラウマで逆上
生まれて始めて温かい家庭の味を知った天音は、お風呂に入り清潔できれいな服を着て、お腹いっぱいになり、子供としてかわいがられる生活になじんできた。
だが、「今日はお好み焼きをしましょう」と由志摩が言った日、悲劇が起こる。
熱した鉄板、フライパンは、かつて母親が天音を虐待した道具であった。
「それやだ!おばさん、それでぶつんだ!!」
いきなり逆上して悲鳴をあげる天音に呆然としながら、由志摩は「この子はお母さんにフライパンでぶたれていたんだ」と気づいたが、天音はあまりの恐怖に箸で思い切り由志摩を刺してしまい・・・
養護施設を追われた少女 第一話の感想
由志摩が天音をいれて5人もの里子を引き取っている理由について、本編では語られていません。
血の繋がった子がいないということで、おそらくは子供のいない夫婦が代わりに里子を引き取って育てている、というパターンだと思われます。
子供たちに対する愛情の深い由志摩は、天音だけではなく心に傷のある難しい子供たちを積極的に受け入れています。
中でも天音は最強?の部類で、「狼少女」と表現できるほどにひどい有様で養護施設で暮らしていました。
専門の職員すら持て余している子だったのに、由志摩はその愛情と寛容さで天音の閉ざされた頑なな心をゆるめ、少しずつ子供らしい子供に戻っていきます。
うまくいくかと思われた里親家庭での生活ですが、ネグレクトで深い傷のある天音は「母親の虐待」を一瞬で思い出す道具である「フライパン」を見てパニックになり、自分でも思いもよらないことをしでかしてしまいます。つづく。
第2話ネタバレ